コハルという赤ん坊

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 といっても、私の過去の転生が無事に完了したと実感したのも最近なのだから、しばらくはこの赤ん坊は普通の赤ん坊だっただけで何もおかしな事はない。 「コハル。今日もタッチの練習?」  私に近寄り小夜が言う。  私はベッドの上で立ち上がり歩きたい為に、起き上がって立ったつもりなのだが、掴まり立ちが精一杯だった。  どうしてこんなにも出来ないのだろう。 それなのに、小夜は偉いねと私に言って頭を撫でてくる。  それが無償にくすぐったい思いで、私は涙をこぼした。 「あれ。コハル泣いてるの?」  泣く。  そういえば、そういう事を忘れてしまいそうなくらい嫌な記憶も蘇っているのだった。  転生とは良い事ばかりじゃない。
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