ドルマという過去

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 恐怖もあるけれど、ろくに水も飲ませてもらっていなかったからだろう。  悲鳴すらゆるされず、私は壁に追い込まれていく。 「俺はさあ。ドルマ。もう戦いたくないんだ。だからな? 最後には女の体の中で死にたいんだよ」  うわ言のようにいうソイツは、私が着ていた唯一の雑巾みたいた一枚の布を剥がした。 「ぎゃっ!」 「声。出るんじゃねえか。昨日はもう出ないって散々言ってたのに」  私の声。かすれて声じゃない猫のうなり声みたいなその声。  昨日のおぞましい記憶が蘇ると思ったけれど、その記憶は恐怖のせいか蘇ってきたりしなかった。ただ、複数の男性が私を取り囲んでいる映像なら、なぜか見えてきたけれど。 「ドルマ。さあ。俺とここで死ぬまで楽しもう」  私はその意味が分かった。  ソイツは本当に死ぬつもりでここに来ている。  爆撃は近いから逃げないといけないのに、わざと逃げないでここで私を襲って死ぬつもりなんだ。
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