ドルマという過去

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 ソイツに強引に体を押し倒された後、私は腹に冷たい銃口を感じた。 「ドルマ。俺には娘が居たんだよ」  私がしゃがれ声でもいいから声を出そうとしたけれど、やはり無理だった。 「もうあんな事されたら生きていけないだろう? それに、俺だって自分の娘くらいの子に欲情してたら、もう家には帰れない」  ソイツの瞳が正常じゃないと分かったのは、そんな一言を聞いた時だった。  昨日の騒ぎの際、私の体も壊されたけれど、ソイツは心を壊された。  誰が言い出したか分からない集団暴行は、私達の村の女の子は常に狙われていた。犯人は近くにキャンプをしている白人の軍人だと分かっていたけれど、私の村は女性差別が酷く、暴行を受けて村に帰ってきたとしても、更なる被害にあったり、家に入れてもらえず食べ物も食べれずに、路上で死んで終わるという末路しか残っていなかった。  私もきっとそうだろう。  生きて村に帰れたとしても、更なる苦痛が待っているだけだ。
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