コハルという赤ん坊

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 私の記憶がまた再び人間の中に宿り、生きていると感じることが出来るようになったのはどこかのベッドの上だった。何かのおもちゃらしきものがクルクルと周り、音が鳴っている。安心感というよりは、不思議な気持ちが私の中に湧く。  それまでの私は、恐らくだが、毎日寝てミルクを飲んで泣いて過ごしているの繰り返しで、間違いないだろう。赤ん坊なんてどこにいたって同じだと思うから。  こうしてベッドで寝ているという事は、それなりな生活が保障されているということなんだろう。私は嬉しくて涙が出てくる。  私が『ドルマ』だった頃はこんな立派なベッドなんてなかったし、こんな見た事がないおもちゃだって専用に買ってもらった記憶なんてない。  まあ、赤ん坊の記憶だけは常に曖昧にしか覚えていられないが。  まずは転生出来たようだ。  でも、どんな国だろう。  私は寝返りをうって、部屋を見回す。
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