序章。悪夢の始まり。

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溢れ落ちた内臓を一ヶ所に纏め、持てるだけ内臓を抱え込み井戸川と呼ばれた男がドアを蹴り、別の部屋へと移動する様子を映し続ける。 『もう彼女達に食事を与える時間か……暫くは戻っては来ないだろう…残念だがバッテリーが無くなりそうだ…この映像を見ているなら虫の良い話だと思うが助けて貰いたい…残念だが私一人では此の悪夢を終わらせる事が出来ない可能性が高い…これ以上私の犠牲者を増やしたくない…この施設は…』 映像は重要な情報を伝えぬまま電源が落ちてしまったようだ。ハッキリしているのは此の場所を特定し、現実とは思えない問題を解決しない限り、被害者が増え続ける可能性があると言うことだ。 連続失踪事件捜査本部は映像が終わったあとも静寂に包まれている。見ていることに耐えられなくなったのか当初は全て埋まっていた席が数える程度だが空席になっていた。 誰一人として口を開こうとはしない、言葉を発したいのだろうが、余りにも現実離れした映像に大半の警察官は身体を小さく震わせ、強く拳を握り締めている。 『はっきり言って、これは我々警官だけでは解決は難しい…私からの署長に相談し可能であれば自衛隊の協力を仰いでみる……本日は解散、映像に関しては他言厳禁とする。』 沈黙を破り言葉を発したのは安藤警視正である。その場に立ち上がり捜査本部を出て直ぐに左に曲がる、恐らく其のまま警察署責任者である署長の元へとむかったのだろう。
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