序章。悪夢の始まり。

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明らかに動揺を隠せない二人、カメラが手の震えのせいで小刻みにブレが生じている。通路は一本道、ランプで不気味に真っ赤に染まった通路の先は果てしなく突き当たりが見えない。 壁に片手をあてながら歩く女性が突然悲鳴をあげた。壁に触れていた手が鋭い刃物を当てられたように切れ血が床に落ちている。 カメラを投げ捨て女性に駆け寄る男性、二人は、その場にしゃがみこみ深く切れた傷口を、破った服を包帯の代わりして応急処置的に止血をしているようだ。 しゃがみこむ二人の間に通路の奥から人の形をした何かが、身体を左右に揺らしながら近づいている様子が映りだす。 しかし、慌てているせいで破った服が包帯としての効果が発揮されず、血の止まらない傷口を塞ぐのに必死になっている二人は其の異様な存在に気付いていない。 しゃがみこむ二人の存在に気付いた其は身体を大きく揺すりながら走ってきている。バタバタと通路に反響する音がカメラにも入ってきていたのだ。 その存在に気付いた二人は慌てて立ち上がり反対方向に男が手を引くような形で逃げる。残されたカメラに近づいてくる其は真っ赤に染まった研究服のような物を着た男性。 顔には大型の獣に引き裂かれたような深い傷、男が通りすぎるのと同時に響き渡る悲鳴、暫くして映し出されたのは動かなくなった二人を引き摺りながら歩く男の後ろ姿をであった。
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