序章。悪夢の始まり。

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引き摺られた血の跡を映した映像が約十分間に渡り流れ続け、これ以上待っても仕方がないかと皆が思い出した時、再び変化が起きる。 『すまない…全て私のせいだ…本来なら真っ先に死ぬべきだが…私は此の悪夢を終わらせなければならない…』 少し喉が渇れたような男性の声を残し一端、映像が途切れる。次に映したのは逆さまに吊るされた十体以上の血塗れの遺体、殆どが内臓を抜き出された状態であった。 『彼の変わり果てる前の名前は井戸川淳也、優しく礼儀正しい青年だった…だが私の開発した機械の影響で狂ってしまった…彼と私を含め十名の研究員がいたが正気を失っていないのは私だけだ…くそ…戻ってきたか…』 先ほどまでの真っ直ぐな通路ではなく、様々な機器が置かれた研究施設のようである。撮影者は馴れたように天井に登り部屋の扉を開け放つ井戸川の姿を映す。 彼が連れてきたのは二十代前半と思われる男性、まだ生きているようで脚をバタバタを動かし抵抗しているようだ、しかし井戸川に捕まれた足は離れる事なく、手際よくロープで脚を縛られ逆さ釣りにされてしまう。 『そんなにワタシを恐れることはナイだろ…私はジンタイ科学にセイツウしている…痛いのは、ホンノ一瞬だ。』 逆さ釣りで暴れ抵抗する男性の前を何度か行ったり来たりを繰返し、近くの遺体に刺さっていた刃物を彼の腹部に突き刺し一気に縦に肉を切り裂く。 大量に溢れだす血液、井戸川は開かれた身体の中に躊躇なく両腕を差し込み一気に内臓を抜き出した。それは漁師が魚の鮮度を保つ為に内臓を抜き出すように実に手際良い。 今さっきまで暴れ生きてた男性は一瞬で燻製を作るように吊るされている周りの遺体と同じ只の肉の塊へと変わり果ててしまう。
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