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勝手知ったるなんとやらだ。その辺に転がしてあった制服を投げて寄越すと、由希は俺の後ろに立って寝癖と格闘を始める。小学生の頃から変わらない、俺こと式海昴の朝の風景。
「あ、こら。まだ動くなよ」
心地よいクシの感触を堪能しながら、俺は首を巡らし由希の姿を見遣る。
二の腕あたりまで伸びた栗色の髪。筋の通った鼻に二重の目。白い肌に映える、血色の良い唇。身長は160あるかないかの瀬戸際で、何故か体重は教えてくれない。
俺の親友である冴木由希は、ほぼ毎日、知らない男に声をかけられる。だって見た目は超が付くほどの「美少女」だ。ちょっとお茶でもとか、好きです付き合ってくださいとか。世の男どもを一目で虜にする美貌を、由希は完全完備している。
しかし由希が超絶な「ネタバレ」をすると、皆、尻尾を巻いて逃げ出すのだ。あの光景は何度見ても笑いが込み上げてくる。
「……今、すごく失礼なこと考えてない?」
手を止めた由希がじと目で言った。
由希曰く、俺は顔に出やすい質らしい。とはいえ隠し事をする間柄でもないし、俺は思っていたことをそのまま口にした。
「いや、別に。こんな可愛いなりしてても、やっぱり“男”だよなって」
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