act.1 異世界に行ったら俺の親友が女体化した件。

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 俺の言葉に由希の眉が跳ねた。 「それ、もう一度言ったら殴るから」 「殴ってから言うなよ」  既にグーパンチが炸裂した後頭部を撫でる。由希は不機嫌な様子で「はい終わり」とクシを放り投げた。 「まったく、親切にしてやってる僕が馬鹿みたいじゃないか。こんなことなら置いていけば良かった」 「悪かった、悪かったって」  さっさと歩き出した由希を追って、俺も自室を後にする。  そう、俺の親友である冴木由希は、れっきとした男だ。股間にちゃんとブツも付いてる。ガキの頃、家族ぐるみで行った銭湯で確認済みだから間違いない。  由希はその、美しすぎる外見のせいで、小学生の頃からいじめの標的にされやすかった。それを助けたことで俺たちの交流は始まったのだが、以来、由希は極端に「男」と「女」という単語に敏感になってしまったらしい。  「ごめん」と「うるさいな」を何度か往復させていると、朝食が並ぶリビングに到着。おたま片手の母親がこちらに気付き、由希には笑顔を、俺には怒声を浴びせてきた。 「こら、昴! アンタいつまで寝てるの! 由希ちゃんまで遅刻しちゃうでしょうがっ。ねえ、由希ちゃん?」
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