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楠ゆずは。
彼女を一言で表せば「清楚」。
出会いは大学のサークル。バイト仲間の祐子の影でまわりの会話を聞きながら、クスリと笑っているような控えめな女の子だった。
顔もかわいいし、物腰も上品。性格も穏やかで常に他人を気遣う優しさがある。
ただ気が弱くて引っ込み思案、彼女に目を付けた男が話しかけても、すぐに祐子の影に隠れてしまう。
そんなわけで誰とも付き合っていないらしく、俺は何とかチャンスを作ろうとタイミングを狙っていた。
他の連中に対して俺の最大のアドバンテージは、彼女が最も頼りにしている親友の祐子が、俺の長年のバイト仲間だということだ。祐子とは男友達のように気が合って何でも話せる仲だった。
ある日のバイト帰り、俺は祐子に頼んだ。
「なぁ、俺さぁ、ゆずはちゃんと付き合いたいんだよ。話ができる場をセッティングしてもらえないかな」
照れくささもあって、少し軽い感じで俺が頼むと、祐子はキッと鬼のような形相で俺の顔を見た。
「馬鹿野郎!」
「え?」
それ以来、祐子はバイトを辞め、サークルにも顔を出さなくなった。
大学構内で会っても、ぷいと顔を背けて行ってしまう。
俺…あいつに何か悪いことしたか?
そんなある日の大学の講堂で、ゆずはが俺の服の裾をツイと引っ張った。
「あの…祐子ちゃんのこと…祐子ちゃん、貴方のことが大好きだったんです…凄い泣いてました…貴方…最低です」
「え?」
女ってのは難しい。
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