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「わあああああ――!」
彼は私のベッドにやって来ると、両手を力強く肩に被せて、大きく見開いた真剣な眼差しで私の顔を見た。
「――――!」
私の事に厭気がさして、私を殺害しようとしているのか。
肩に込められた両手の力が強くて、とても痛い。この儘私の首筋に手を回すのだろうか。
そう思うと、怖くて身動きがとれず声も出せなかったのだが…。
どこか彼に殺害される事を受け入れようとしている自分がいる事に気付く。
私の看病の為に人生を犠牲にして来たストレスを口にする事が出来なかったのだ。暴れるのは無理も無い。
此処までよくして貰っているのだから私は何一つ恩を返せない儘旅立ってしまうのも、
幾ら病気だからとは言え忍びないと思う。
私の事をもう充分によくしてくれたんだ。もう解放されて自分の人生を生きても悪い事は無い。私は…
此ほど迄に優しい、愛する人に殺害されるならば本望だ、私の命で彼の人生を取り戻せるのならば私は喜んでこの身を差し出そう。
それが私に出来るたった一つの事――。
静かに瞳を閉じてその時を待った。
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