第1章

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 「きょ、う、こ、さ、ん」  彼が出逢って初めて私の名前を呼んだので、驚いて目を開けてしまう。  「はい」  「ず、と、ず、と、か、が、て、ま、た…」  辿々しくとも何かを伝えようとしている。  「ぼ、きょうこ、さん、こと、きです、けこ、してくだ、さ…い」  結婚して下さいと言ったのか?  「でも私、病気だし、それに後……」  「い、しょ、なる、に、じょ、けん、て、い、ま、か?」  病気で寿命も短いのに、彼はそんな条件は必要ないと言ってくれた事はとても嬉しかった。 私は、首をゆっくり横に振り努めて笑顔を見せると、  「はい…私でよければ」  「あ、り、が、と…う」  彼は私の唇にそっと唇を重ね合わせた。
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