スイカとキュウリ、それから唇。

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1人は呆れながら、またキュウリを頬張る。 ボリボリ ボリボリ 「…あまい方が絶対おいしいのに…」 もう1人は、しょぼくれながらスイカを頬張る。 どうしてしょぼくれているのか、そんな理由はどうでもいい。 子供は、自分の言ったことを否定されると、とりあえずしょぼくれるのだ。 そういう生き物なのだ。 シャクシャク シャクシャク 「…スイカ、うまい?」 スイカを見ながら、呟く。 「うまいよ。あまいもん。」 口の周りにべっとりスイカの汁をつけて、ドヤ顔をする。 なぜそこでドヤ顔をするのか。 何度も言おう。 子供はそういう生き物なのだ。 「口がベトベトになるくらいあまい!」 「へぇ…」 持っていたキュウリを竹笊(タケザル)にのせ、べっとりスイカの汁をつけた顔に近づく。 不思議そうにする1人をよそに、口から1㎝右をペロリと舐めた。 「…本当だ。あまい。」 独り言のように呟いてから、少し意地悪っぽい表情を見せた。
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