第1章

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朝、目が覚めると身体が動かなかった。 金縛りだと思って目だけを必死に動かすと、私の身体の上に黒い何かが乗っている…… 「お~は~よ~」 よく見ると、あの丸眼鏡と三角半平が目に入って思わず蹴飛ばした。 「ひどい! 朝から一撃食らわされた!」 「ひどいのはどっちよ! 心臓止まるかと思ったじゃない!」 まだ、心臓がドキドキしている。絶対に今ので寿命縮んだ! 「大体、何でミノが居るのよ!」 「100物語を見に行ったら野次馬幽霊が結構居てさ、どうも古戦場だったらしくて落武者の幽霊と意気投合して朝まで酒飲んでる間にいつの間にか100物語が終わっちゃってて……」 ば~か! 「小岩ちゃんたちもみんな寝ちゃったから私も寝るね! おやすみ~!」 ふと、気づくとちゃっかり桃の布団に潜り込んでイビキをかきはじめた。 「この……幽霊なんだから墓場で寝なさいよ!」 桃が布団をひっぱがすと、いつの間にかパジャマ姿になっているミノが丸くなっていた。 「幽霊が布団で寝ちゃダメなんて偏見だ! 人権侵害ならぬ幽霊権侵害だ!」 「屁理屈ばっかり!」 「屁理屈はどっちよ!」 2人がいがみ合っていると、お婆ちゃんの声が聞こえて来た。 どうやら朝食が出来たらしい。 「ほ~ら行って来なさいよ。 起きてる間は布団使わないんだから私が代わりに使っててあげるわよ~」 「結構です!」 桃はミノを蹴ると、布団を畳んで押入れに片付けた。 「ひど!」 と言うミノの声が聞こえたが、気にせずに部屋を出る。 今更ながらに、あの時に助けるんじゃなかったと思った。 「あ~もう、朝から気分悪い」 ブツブツと呟きながらトイレのドアを開けると、いつの間にかミノが座っていた。 「トイレのは……」 最後まで言わさずにドアを閉めると、再びゴキジェットを構えてドアを開ける。 「幽霊の話しは最後まで……」 聞きません。言わせません。 桃がゴキジェットを振りかけると、ミノは悲鳴を上げてトイレから出て行った。 下手な除霊よりも効果があるなぁと思いつつトイレに入ると、その日からゴキジェットが姿を消してしまった。 本物のゴキブリが出てきた時に困ったのは言うまでもない。
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