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「あなたは幽霊を信じますか?」
NO
と答えた方には理解し難い話なのですが、幽霊は居ます。
ほら、あなたの後ろに……∑(゚Д゚)
私とお兄ちゃんがそれに会ったのは夏の暑い季節でした。
蝉はみんみん煩いし、クーラーのない家でじっとしててもねっとりとまとわりつく様な汗が出る……そんな日でした。
「熱い~」
茜色の空を電線越しに眺めながらアスファルトの上で先ず呟いたのは私。
栗原 桃。小学4年生。自分で言うのもなんだけど太ってはない。中肉中背。
「お前、自分の荷物まで俺に持たせといてよく言う!」
少し前を歩いていた兄、柚が私のリュックを歩道に投げて、イライラしたように言った。
「もう少しでお婆ちゃん家に着くんだからイライラさせるなよ!」
柚は年子だからそれ程身長差は無い。はたから見たら双子に間違われる程二人は背格好が似ていた。
だから、柚に怒られると自分が自分に怒られている気分になる。
「だって~暑いんだもん」
「アツイ~ア~ツイ~」
何処からか、私以外の暑い暑いと言う声も聞こえて来る。
「ほら! 私だけじゃない!」
「は? お前、何言ってんの?」
二人が会話している間も、何処からともなく暑い~と喚く声が聞こえる。
まるで煩い蝉みたいに……
「まさかまた、何時もの幽霊の声が聞こえる~とかか? バカらしい!」
「ええ!? そんな事無いもん、ちゃんとそこの柳の木から……」
元々、私は霊感があるんだけど、兄の方はからっきしなのか、私が何かを聞いたとか見たとか言っても幻聴幻覚だと言って相手にもしてくれない。
でも、私はその道路脇に生えた柳の木から確かにその声を聞いた。
「アツイ~」
兄をほっといて柳の木に近付くと、何かがぶら下がっていた。
ロープでぐるぐる巻きにされていて、まるで逆さ吊りにされたミノムシみたい……
「アツイ~焼ける~助けて~」
「どうしたの?」
私が声をかけると、くるりとそれが半回転して、割れた丸眼鏡が目に入った。
「有名になりたくて名刺作って子供たちに配ってたら子供にリンチされた~」
「なんだそれ?」
ふと、幽霊否定的な兄が近づいて来てそう呟いた。
どうやら兄にも見えているらしい。
「知らな~い」
それが、私たち兄妹とそいつとの出会いだった。
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