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桃とミノはお風呂から出る頃には仲良くなっていた。
ミノは二頭身で白い着物姿で足はない。
頭に三角の半平をつけていて、手が柳の木みたいに曲がっている。
本人が言うには、ステレオタイプと言って、ごく一般的な幽霊の姿をモチーフにしているらしい。
ただ、その特徴的な丸眼鏡が気にはなるが……
「やっぱり有名になるには先代さんに習わないとね! そして自分らしさを強調!」
「そっか、それで名刺作って配ってたのね」
何だかズレているなぁと思いつつ、不憫にも思えて来た。
親近感が湧くのは多分、同性だからだろう。
「そうなのよ! 折角私が忍び込んだ印刷会社で刷った100枚の名刺を配ってたら……
何こいつ変なの~
おれらよりチビのくせに生意気~
ロープで締めてやる!
なんて悪ガキに捕まって眼鏡割られるわ、顔に油性マジックで落書きされるわで……」
「……そっか、辛かったね」
いや、そもそも逃げろよ。
と思いつつ、同情する。
まあ、悪い霊ではなさそうだし?
ちょっと面白そうだから放っておこう。
「桃ちゃんは柿婆ちゃんのお孫さん?」
「そうだよ~柿婆ちゃんの事、知ってるんだ?」
「いや、つい最近この里に来たら、一人寂 しく暮らしてるのに、ニコニコしながらシーツを洗濯してたから……」
「えへへ。普段一人暮らしだから、毎年私たちが遊びに来るのを楽しみにしてるんだよ」
「ふ~ん」
「ミノには家族いないの?」
ふと、なんとなく聞いた言葉だった。
まあ、幽霊なんだから、幽霊のパパさんとママさんを想像する。
「……パパんとママんとミカエルがいるよ!」
「ミカエル?」
「飼ってる猫の名前」
「それって猫につける名前かなぁ?」
やっぱりちょっとズレている……まあ、面白いからイイけど……
「これからどうするの?」
「ん~とりあえず今まで通り適当に情報収集していろいろ試して見て有名になるように頑張ってみる」
「情報収集? いろいろって何?」
桃が聞くと、ミノは徐に帳面を出して開いた。
「大抵、図書館とかで情報仕入れて来るかな。
たまに学校の図書室にも行ってる。
結構勉強になるよ」
「???」
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