第1章

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その帳面は掌サイズの雑記帳で、色々とメモが書かれている。 桃が興味津々でその帳面を覗き込んだが、乱雑に書き込まれていて読めない。 「そうそう、こないだリングの再放送があった時にテレビで観てね」 リングの再放送? あ、貞子3Dとかやるから再放送もしてたのかな? 「呪いのビデオなんて面白そうだから私も作ってみたの!」 「え~ それって見た人は他の人に見せないと死ぬやつ? ヤバイよ」 「私もそう思ってね、こうしてみたの」 ミノは徐に画用紙とクレヨンを取り出して絵を描いてくれた。 「このビデオを観て24時間以内に別の誰かに見せないと笑いが止まらなくなるって呪いにしてみた」 「はぁ?」 画用紙には子供が笑い転げている絵が描かれて居る。 が、上手ではない。 「病院に行っても治療薬は無く、死ぬまで笑い続けるという……」 「それはそれでなんか迷惑で嫌かも」 別の意味で確かに恐怖は感じる。 「でね、テレビ局から拝借して来たカメラで2週間かけて撮影して編集して作ったの」 テレビ局でカメラがなくなったらこいつのせいなのか……? でもなんか本格的に一生懸命作ったんだな~ 「で、出来たのがこれ」 徐にミノが懐から黒いビデオテープを取り出した。 反射的に仰け反ったが、桃はなんとなくそれが懐かしいように思えた。 「でね、近所の一人暮らししてる可哀想な若者の家に忍び込んで、ビデオをセットしてあげようと思ってたのよ」 「? それで?」 「その家、DVDプレイヤーしかなかった」 「……」 まあ、今時ビデオデッキの方が珍しいかな? 「それからかれこれ100件くらい回ったんだけど、何処もAQUOSの薄型テレビとDVDデッキばかりで……未だに誰にも観て貰えてないの」 ミノが涙目になりながら話すが、 こいつバカだなぁ。 考えればわかりそうなものなのに。 と、同情の余地がない。 「編集の時とかに気づかなかったの?」 普通、気づくと思う。 「だって! 呪いのビデオだから意味あるんでしょ?! 呪いのDVDじゃ意味ないでしょ!」 「観れない方が意味ないでしょ」 桃が呟くように言うと、ミノは撃沈していた。 よっぽど堪えたらしい。
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