第1章

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「ねえ、まだ落ち込んでるの~?」 夕食も終わり、部屋でのんびりしていると、部屋の隅でいじけているミノの背中を見て桃が声をかけた。 「DVDに焼き増ししたらいいじゃん」 「それじゃあ笑が止まらなくなる呪いは焼き増し出来ないの!」 そんな繊細な呪いなんだ。 「まあ、いいじゃん。それなら他の方法考えれば……そうだな、トイレの花子さんみたいにトイレに出没するとか」 桃が提案するが、ミノは静かに首を横に振る。 どうやら既に試験済みらしい。 「トイレに居たらバケツで水かけられるし、そもそも臭くて誰かが来るまで待ってるとか出来ないし、そんなトイレで弁当食べてる可哀想な奴しか来ないし……」 「……ごめん、聞くんじゃなかった」 そう考えると、トイレの花子さんってすごいと思う。 「じゃ~ほら、呪怨の映画観た?」 「観たけどあんなのただの引きこもりじゃん。 私がどっかの家に居ついててもなかなか入居無いし、あんなんで映画化なんてなんか悔しい」 幽霊目線だと家に地縛してたら引きこもり扱いになるの?! 「お?」 ふと、ミノが何かに気付いて顔を上げた。 桃が首を傾げていると、生暖かい風が窓から吹き込んで来る。 ふと天井を見上げると、顔の半分が大きく腫れた青白い顔がニヤリと笑ってこっちを見ていた。 とっさに、手元にあったゴキジェットをそいつめがけてスプレーした。 ぎゃー!! とそいつが悲鳴を上げる。 「やめてやめて! 幽霊にゴキジェットはやめてあげて! ゴキブリじゃないから!」 ミノにそう言われてやめると、天井に居たそいつは落ちて来て咳き込んでいた。 「大丈夫? 小岩ちゃん」 「小岩ちゃん?」 ミノの言葉に首を傾げるが、その小岩ちゃんの背中をミノは優しく撫でている。 その小岩ちゃんも、二頭身で灰色の長い髪に白装束を着てやっぱり頭に三角半平を付けていた。 「塩や酒ならいざ知らず、ゴキジェットなんて初めて……」 「ごめんね。よく言い聞かしとくから! せめてファブリーズぐらいにする様に言うから!」 何かズレてる…… と思いつつも、まあ、とっさの事とはいえ、自分も悪いのだろう?
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