第1章

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小岩ちゃんが落ち着くと、ミノはやっと小岩ちゃんを紹介してくれた。 「前に四谷怪談を観てお岩さんを知った時に……」 え? 四谷怪談ってテレビでやってたっけ? そう言えば、お母さんの若い頃は夏になると必ずテレビでやってたって聞いたけど、ミノって一体いくつなんだろ? 桃がそう考えている間に話が進む。 「私もお岩さんの格好をして誰かを脅かそうとしてたのね。 その時に、薄ら寂しい柳の木の下で泣いてる人が居たから声をかけたの」 なんか嫌な予感がするな~ 「振り返ったその人が小岩ちゃんでね、お互いにお互いの顔を見てビックリしたのが縁で、それから仲良くなったの」 「……ふ~ん」 幽霊同士で化かし合いだなんでバカだなぁ……と思う。 「はじめまして。お岩さんみたいになりたくてお化け屋敷なんかにたまに出没してます。 小岩ちゃんです。よろしくね」 「はあ……栗原 桃です。よろしく?」 よろしくで良いのかどうか疑問だが、まあ、この幽霊も悪い奴ではなさそうなので放っておこう。 「そんなことより、近くの小学校で100物語してるらしいのよ! 行ってみない?」 「ええ!? 面白そう! 行く行く~!」 まるで合コンにでも行く若い女の子みたいなノリで2人がはしゃいでいる。 「100物語?」 桃は聞きなれない言葉に首を傾げた。 「夜の学校に忍び込んで、100本のろうそくに火を点け、怖い話を一話する度にろうそくの火を一本ずつ消していくの」 「それで最後の一本が消えた時、地獄の釜の蓋が開いてお化けがでるって言う……」 小岩ちゃんとミノがおどろおどろしく説明してくれた。 「それってヤバイんじゃ……」 桃が冷や汗を流して言うと、小岩ちゃんとミノは顔を見合わせてニヤリと笑った。 「でも本当は集団心理による幻覚か、私たちみたいに面白半分で集まって来る幽霊だけだもんね~」 「夏の風物詩だよね~」 2人がワイワイ話しながら楽しそうに窓から出て行った。 「幽霊って……」 桃は二つの影が闇夜に消えると、なんだかあの世をエンジョイしている2人の事を思い出して笑ってしまった。
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