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「貴方様と出会わなければ、この顔もさらさずに済んだ。責任、とってくださいます?」
「咲良さん、貴方って一体……」
「街の人からお聞きになったのでは?私は魔女。吉原に住む魔女だと」
そういえば宿屋にいる由紀さんから聞いた。
吉原の魔女……。
どういう意味かわからなかったけど、もしかしてこういう事だったのか。
「できれば真実をお話したくなかった。黙っているよう言われていたものですから」
「言われていた?」
咲良さんは狐面を被りなおした。
肩を震わせ、奇声にも似た笑い声をあげる。
こんなの……僕の知る咲良さんじゃ……
「私は、貴方の知る咲良ではありません」
……はっ?
思わず出そうになった言葉をぐっと呑みこみ、目を擦らせてもう一度咲良さんを見る。
あの優しかった咲良さんとは今は全然違うけど、それでも見た目は咲良さんそのまま。
雪の日に出会った、あの時とそのまま。
なのに座って喋っている目の前の咲良さんは、別人だという。
どこから、どこまでが咲良さんなんだろう?
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