吉原の魔女

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僕は工藤健太(くどうけんた)。 普通の会社で働く、しがないサラリーマン。 今日もいつもの様に出勤しようと、家の扉を開けた。 はずだったんだ。 扉を開けた先には、煌びやかな灯りが広がっていた。 あれ?今、夜だっけ? 大騒ぎしている街の入り口に、僕は立っていた。 違和感はそれだけでは無い。 何もかもが僕が生きてきた世界と180度違っていた。 「あんさん、どうしたんですの?」 後ろから声をかけられ、僕は思わずビクリと肩を震わす。 そこに立っていたのは、綺麗な着物を着た女の人だった。 「え?えっと……ここは?」 たどたどしくその人に聞くと、女性は小さく微笑んで耳元で教えてくれた。 「ここは吉原遊郭。今は1630年ですわ」 僕は驚愕した。 家から一歩外へ出たら、そこは大昔の遊郭でした。 酒を飲んで酔っ払っている人もいれば、遊女だと思う女性と客だと思う男性が並んで歩いていたりしている。 現代でいう歓楽街だ。 街の中央ではどんちゃん騒ぎで、人々が入り乱れている。 僕はある事に気付いて後ろに振り返るが、それが無い事に気付いて思わず目を疑う。 それは、来た時に通った扉。 玄関で開けた自分の家の扉が、そこに無かったのだ。 え?じゃあ僕、どうやって帰ったらいいんだろう……。
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