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「あの、こちらに『咲良』という女性は……」
恐る恐る聞いてみると、主人はちょっと眉を顰めた。
「あんた、金を持ってそうな顔に見えないんだけどなぁ」
「500銭しか……」
「そんなしけた金で、彼女と遊べると思ったんか?」
やっぱり言われた。
それ程彼女は、高いのだろう。
ふと僕は疑問に思った。
遊女は買われた金額を返せば、自由になれると聞いたことがある。
太夫の咲良という彼女なら、いくら高い金額でも既に返せるほど稼いでるのではないか?
それなら彼女は、何故ここにいるのだろう?
いなければいけない理由があるのだろうか。
「悪戯で来たなら、帰ってくんな」
「えっそんな……」
まずい、僕がただの悪戯者だと思われてる。
そりゃあお金も持ってないのに、一番人気の女の子出せって言ったらキャバクラでも怒られるよね。
でもここまで来て引き返すのは嫌だ。
折角彼女の近くまで来たのに、すぐ近くに咲良さんがいるのに……!!
「何言い争ってはんの?」
女性の声がした。
さっきまでの主人では無い、優しい声。
僕は思わず、その声のする方を見た。
いる、彼女が……いる!!
「あら、あんさんあの時の……」
咲良さんは僕を見て、また微笑みかけてくれた。
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