3人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
公園のベンチに座り、詫びがてら、コンビニ袋から野菜ジュースのパックを渡す。
女の子は喜んで受け取ると、ほぼ一気に飲み干した。
それだけ喉が渇いていた、と思っておく。
女の子は満足げに息を吐くと、あのね、と切り出した。
「まゆ、ずーっと歩いてるんだけど、家に帰れないの」
公園に遊びに来たのに、誰も居ないし来ないし。
帰ろうと思ったが、いくら歩いてもここへ戻ってしまうらしい。
確かに、広い公園には誰も居ない。
「ケータイは?」
「電波無いの。ケンガイっていうあれ」
持ってるのか。
見せられたスマホは、キッズモデルでもなく、通常仕様のようだった。
確かに、画面の隅には「圏外」の表示が出ている。
「地図もね、使えないの。GPSも」
言いながら、画面を触っていろいろ試している。
最近の子供は、使いこなしようが違う。
自分はもはや、GPSが何の略かも分からないというのに。
「……誰にも、会わないって?」
「うん。友達と遊ぶ約束してたけど、おけいこで遅くなっちゃったから。だれも居なかったんだー」
喋りながら、その友達と連絡を取ろうとしているらしい。
が、すぐに画面をおとしているから、諦めたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!