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「つーかお嬢ちゃん、名前、まゆってゆーの」
「真雪だよ。5年生だからもう、わたしって言いなさいって言われるけど、まゆはまゆだもん」
「……最近の5年生は、知らない人にガンガン喋ってくモンなの」
「なに?」
「知らない人にモノもらったり付いてったりすんなって、教えらんなかったのか? 今更だけど」
そこでやっと怖くなったのか、真雪は大きな目を見開いて、オレを見上げた。
ここは地元の者より学生が多く歩く、大学のすぐそばだ。
そうそう悪い人間も居ないが、小学生でも高学年なら、それくらいの事はわきまえてそうだが。
しかし真雪は、にこおっと笑った。
「大丈夫。知ってる人だもん」
「そうかい。じゃ、オレはどこの誰だって?」
「星子ちゃんのお兄ちゃんでしょ?」
星子。
ほぼ毎日ここへ遊びに来ている幼児。
野菜ジュースを買ってこいと騒いだ本人だ。
まぁ勝手に飲んだオレが悪いんだが。
答え合わせを待っている真雪から、目を逸らす。
「……オレぁあいつの兄貴じゃねえよ」
「じゃあ、お父さん」
「何でだよ」
ほかの選択肢は無かったのか。
真雪は、じゃあ何?と首を傾げている。
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