木立闇

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   転んだと分かったのも、とりあえずそこから逃げようともがいたら、熱い何かに顔が当たってびっくりしたからで。 「どうしたの?」  声をかけられて、気がついた。  道路に仰向けに寝転がっていた。  無様だけど、そんな事はいい。  やった、人だ。 「た、たすけて」  足に力が入らなくて、立てない。  手を引いて起こしてくれた人の、腕にすがりつく格好になる。 「え? 何? 大丈夫?」  びっくりしているその人も、僕と同じ大学生みたいで。  大きめの肩掛けバッグが足下に落ちている。  散らばった本には、うちの大学図書館のシールが見えた。  よかった、知ってるものだ。  でも目に入る、黒々とした、その人の影。  また、ぞっとする。 「……さっき、この先で」 「え?」  指さすと、行き止まりの方へ振り向かれた。  恐る恐る一緒に見れば、そこは夏の日差しが照らすだけで。  そこまでの道へ、涼しげな木陰がいくつかあるだけで。  その人が首を傾げた。 「何も無いみたいだけど……」 「……そんな」  
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