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ネイトについた僕らは早速その師匠とやらを訪ねた。
師匠の家は滝の落ちる岩場のすぐそば、水がギリギリかからない位置にあった。
「すみません。」
クロが扉を叩きながら声をかける。
「なんだい。今忙しいのだがね。」
しゃがれた老人の声だった。
扉を開けると老人は驚いた顔でクロを見た。
「どちらさまかね。」
「少しお話しよろしいですか?」
「あぁ、入ってくれ。」
中へ入っていく2人の後を追って入ろうとした僕だが、当然嫌な予感はしていた。
「リクさんはここで。」
あーはいはい。わかってるよもう。
小さく頷き素直に従った。
なにやら2、30分程話していたようだが、すぐに中に呼ばれた。
「お主が剣術を習いたいと?」
「はい、そうです。」
「そうかい。お主剣は?」
「これです。」
僕はさっきクロの家から持ち出した剣を静かに机の上に置いた。
「ほぅ・・・。」
師匠は悲しそうな目でその剣を見つめていた。
そしてなぜかやけに納得したように頷いた。
クロは剣を見て少し顔をしかめたが、怒ってはいないようだった。
「お主、この剣のことはわかっておるのだな?」
ここに来る途中、説明の書かれた本を何度も読み、頭に叩き込んである。
「はい。火力は出るが、今のものより扱いづらい。ですよね。」
「そうだ。それをわかった上でつかうのだな?」
「もちろんです。」
「うぬ。結構。わしはグラムという。手を抜くつもりはない。ついてこれなくなった時点で帰っていい。」
「わかりました。僕はリクといいます。よろしくお願いします。」
相手は老人だったが、ただならぬ雰囲気を察し、自然と背筋が伸びた。
それを見ていたクロは何やら微笑ましいような、心配そうな、難しい顔をしていた。
「今日は長旅で疲れただろう。ゆっくり休め。修行の間、この家で寝泊まりするといい。」
「「ありがとうございます。」」
クロとぴったり声が重なった。
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