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朝目が覚めたら知らない施設の中にいた。
それですぐに、両親が死んだって聞かされた。
何言ってるかわかんないって言われても・・・。
僕だって君と同じ気持ちさ。
ちょっと胸のあたりがちくちくするだけで。
「君は今日からここで過ごすんだ。食事も風呂もある。ただ少しお勉強をしてもらう。君は魔法士の素質がある。」
僕の父さんは立派な魔法士だった。
けど、少し優しすぎたんだ。仲間をかばって死んだんだって。
父さんはいつも優しい笑みを浮かべて、僕が困ったときはいつでも優しく導いてくれた。
だけど、そんな父さんはもういない。
正しい方向に導いてなどくれない。
それどころか声すらかけてくれない。
顔を見ることすら叶わない。
そんな思いを抱えながらそこでしばらくの時を過ごした。
その日はちょうど僕の10歳の誕生日だった。
僕はそこから逃げ出した。
嫌になったわけじゃない。
大人の人たちが話してたのを聞いてしまったんだ。
「おい・・。そろそろだろ?」
「あぁ、隣国と戦争だってな。こいつらもかわいそうだよな。何も知らずに死にに行くなんて。」
「どうせ捨て子や孤児だろ。構うもんか。」
「それもそうだな。」
「「はっはっはははは・・・・」」
それまで僕の居場所だったそこは一瞬で僕の牢獄と化した。
こんなとこにいちゃだめだ。
その夜、一人で黙ってそこを抜け出した。
「はっ・・はっ・はっ・・。」
あと少し。あと少しで出口だ。
どうやら今までいた場所は洞窟の奥の開けた土地みたいだった。
もう少しで洞窟を抜ける。
そう思ったとき、僕は何かとぶつかって転んだ。
「大丈夫ですか?」
まるで化け物のようなお腹にズシリと響く声だった。
だけどその中に、なにか優しい響きを感じた。
気のせいだろうか。
前を見ると、何か異様にどす黒いモノが僕に手を差し出していた。
「君は、、、、ナニ?」
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