15人が本棚に入れています
本棚に追加
「君のことは何て呼べばいいの?」
「私ですか?私のことは好きに呼んでください。なんせ名前なんてもう忘れてしまいましたから。」
名前を忘れるってどういうことだろう・・・。
「う~ん・・・じゃあ真っ黒だから、クロって呼ぶ。」
僕はとっさに思い付いた名前を口にした。
「ずいぶん単純ですね。」
「嫌なの?」
「嫌じゃないですよ。君がつけてくれた名前ですから。」
君がつけてくれたって、つけろって言ったのはクロのほうじゃないか。
「でさ、クロは今からどこへ行きたいの?」
「ここが世界のどのあたりかはしっていますか?」
「知ってるよ。習った。ちょうど真ん中なんだってね。」
「そうですね。ここ、タルタロスはこの世界の中心に位置しています。けれど、南のほうの隣国とはこれから戦争になるらしいです。だからまず北に行こうと思います。」
北・・・か。
「この国のちょうど北あたりにちいさな国があるんですが・・・」
「あぁ、知ってるよ。イオラオスだろ。」
僕はクロをさえぎって言った。
「はい。そこに昔からの知り合いがいるんです。まずその人に会いに行こうと思います。」
「わかった。僕は何をすればいい?」
「まず一つ目、武器を持って護衛をしてほしいです。」
化け物のくせに護衛なんているのか?
そう思いつつ、僕はうなずく。
「二つ目、町で買い出しをしてきてほしいです。」
「あぁ。」 これは納得。
「三つ目、私と沢山会話をしてほしいです。行く先々のこと、君の昔の話、君の家族のこと、君の将来のこと。」
なんだか妙な気がしたがあまりにクロの目が真剣だったから僕は思わずうなずいしまった。そのくらい真剣で優しくて説得力のある目だった。
「わかった。約束だね。」
「はい。約束です。じゃあ出発しましょう。荷物はそれだけですか?忘れ物はないですか?」
「馬鹿にするな!大丈夫だよ。」
なんたって僕はこれから一人で生きてくつもりだったんだから。
「じゃあ行きましょうか。」
「あぁ、うん。」
最初のコメントを投稿しよう!