15人が本棚に入れています
本棚に追加
「じゃあなんで最初からそこに行かないの?」
「私一人ではとてもじゃないですが身が持ちません。ですがこのような見た目ですので、仲間になってくれる方もおりません。困り果てていたところにリクさんが。」
なるほど。だから魔法士の僕を。
「じゃあ仲間も見つかったんだし、さっさとそこに行けばいいじゃないか。」
「そういうわけにもいきません。」
「なんでさ。」
「私など微塵の戦力にもなりませんので、リクさんには普通の魔法士の倍、いや5倍は強くなっていただかねば。」
「なるほど。今の僕じゃ力不足ってわけか。」
「はい。残念ながら。なのでどうか私のために強くなってくださるわけにはいかないでしょうか。」
「こんな図体でそんな気弱なこと言ってくるのクロくらいだろうね。」
それとこんなに思いやりがあって優しい化け物も。
「そんなこと言いましたら、こんな図体なのは私くらいでしょう。」
「「ぶっははっははは・・・」」
思わず二人して吹き出してしまった。
僕は笑いながら、いつの日かの違和感と同じ感覚を覚えていた。
この胸の懐かしい感覚は一体・・・・?
そんな思考を断ち切ったのはまたしてもあの声だった。
「それで先程の件は・・・?」
「いいよ。どうせやることもないし。強くなれば何か見つかるだろうし。」
「そうですか。ありがとうございます。」
喜んだようなセリフなのになぜかクロは曇った顔をした。
考えすぎだろうか?
「それではそろそろあの方の家へ向かいましょうか。」
「もうこんな時間かぁ。」
すっかり話し込んでいたみたいだ。
「じゃあ行こう。道案内はしてくれるんでしょ?クロ?」
「はい。もちろんです。では、行きましょう。」
最初のコメントを投稿しよう!