縛られた女

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 自立がしたいと伯母の家をでたものの、一人暮らしの生活は、覚悟していたが楽ではなかった。  いつしか若葉は、昼間はコンビニ夜はキャバクラという生活を送るようになった。  コンビニのバイトは、若葉がキャバクラでナンバー入りするようになった頃に辞めた。  十七の時、年齢を二十と偽ってしていた水商売に飽きると、若葉は風俗店に勤務するようになった。  若葉がSM嬢という仕事を選んだ理由はM嬢は稼げる、と訊いたからだった。  脱がない・舐めない・触られないと謳う風俗は大抵してきたし、SMは風俗の中でも専門の知識がいる特殊な職業であり、SMという未知の世界に、なぜだか興味を惹かれた。  SM雑誌に載っていた会員制SMクラブの面接を受け、晴れて新人M嬢としてクラブに在籍することとなった。  若葉はSMクラブのオーナーに「あかね」という名前をつけてもらい、新人ということで、知識から様ようなプレイの流れなど、すべてを一から叩きこまれた。 「あかね」というM嬢の仕事はきついものだったが、以前の生活に比べ、お金と時間に余裕ができた。得たものの方が大きかった。  在籍している女の子同士の派閥や争いなどもなく、待機中も和気藹々とした雰囲気の心地良さも気に入っていた。  このクラブは無店舗型風俗店というもので、名の通り店舗がなく、あるのは事務所兼待機室として借りているマンションの一室のみである。  客から事務所に電話が掛かると、嬢は指定されたホテルに出張するというシステムだ。  この日も、待機中に出勤している女の子達とたわいもない会話をしながら、指名の電話が掛かるのを待っていた。  本日最初に指名が掛かったのは、「澪」という美しいベテランの女王様だった。
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