教授は◯◯がお好き

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翌朝、土曜日だったが私は大学に向かった。向かうは自分のキャンパスではなく、とある大学の方。 目当ての研究室の前まで来ると、深く息を吸って、吐いた。 コンコンコン、と控えめにノック。 「はい、どうぞ」 声の主が聞き馴染みのあるものだと分かって、ドアを勢い良く開けた。 「兄さん!!!」 突然の来訪に驚きの表情を浮かべているのは、兄の芳希(よしき)。 「冬(ふゆ)ちゃん?!どうしたんだ珍しい…」 「ちょっと、急用で」 兄はパタンと分厚い本を閉じ、どうしたどうしたと言わんばかりに歩み寄ってきた。 「急用って?」 そう、急用は急用なんだが、言い出し辛い。 「花さんは元気?」 「ああ、元気だし順調だよ。まさか、わざわざそれだけを言いに来たんじゃないんだろ?」 本題に入る前のワンクッションくらいゆっくり置かせて欲しい。 「あの、そのだね…ちょっとお願い、というか。でもホント申し訳ないというか」 手土産として持ってきた花林糖を手渡しながらモゴモゴと本題に突入する。 兄を直視できず、目線は積み上げられた分厚い本へゆらゆらと流れる。 私はあまり兄に甘えたことはなかった。
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