ジュニ

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母はそれをあまり良く思っていないらしく、三人で出かけると言うと露骨に嫌な顔をしたが、男には男の世界も必だと、新しい父が助け舟をだしてくれた。 一人はジフンと言った。 父親がテコンドーの道場を開いていて彼自身もアジア大会の優勝経験を持ち師範代を勤めている。 童顔のため試合では相手になめられると言ってはいるが本当のところそんなに気にしているわけでもなく、試合を観戦に来る若い娘達の黄色い声援をそれなりに楽しんでいるように見えた。 もう一人はチャンスといった。 生家は飲食業で何件ものレストランを経営していたが、次男のためかあまり家業に興味があるようには見えず、けっこう女性からアプローチされるのに、 「女は自分から行くのが良いんだ。 嫌そうにしている娘をこっちに向かせてこそ男だ」 と嘯いた。 それなりに楽しくのんびりと学生生活がすぎ、そろそろ就職活動を始めようとした頃父と母に話があると食事に誘われた。 香港には珍しく個室で本格的な韓国料理を出す店だ。 なんとなく気まずい空気のまま食事が終わる頃、父が口を開いた。 「ジュニ、大学を卒業したら会社に入って後を継いでくれないだろうか」 突然で驚いた。 すぐにその気は無いと答えると母が思いがけない事を言い出した。 「ジュニ、隠した訳じゃないのよ。 本当は香港に来る前に何度も話そうとしたの。 でも、どうしても言いだせなくて」 それから深呼吸をすると一息に話し出した。 今、目の前にいる父が本当の父だと言った。 若い頃留学生だった父と結婚を誓い合ったが、お互いの家族に引き離され別れてしまった。 傷心のまま生家の言いなりに結婚が決まった後で妊娠に気が付いたが、アメリカに留学させられていた父との連絡もつかず、思い悩んだすえ子供を守るために黙って嫁いだ。 離婚して七年が過ぎた頃、母を忘れることが出来ず一人でいた父が、韓国に来て母を捜し出し、一年をかけて母との関係を取り戻し結婚を申し込んだ。 その時に息子がいると話し、 反対していた父の家族を納得させる事が出来た事など。 正直何がなんだか解らなかった。 驚くとか、腹が立つと言うより力が抜けた。 そして、前父に冷たかった母が初めて理解できた気がした。
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