雨の出会い

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香港に着いたのは午後二時をまわる頃だった。 長い通路を十五分ほどかけて入国審査を受け、ターンテーブルの前で人に押されながら荷物を待った。 到着ロビーへ出るとガイドの人たちがツアーの名前の書かれたプレートを掲げて待っていた。 案内されて送迎バスに乗ると日本円から香港ドルへの換金をしてくれると言う。 三人合わせて十八万円ほど替えた。 ホテルに着いて直ぐに荷物を解く。 桃花がお金を四等分に分けようと言った。 四分の一を一日分として持ち歩けば、もし落としても残りのお金で旅が続けられると言うことらしい。 そこでしっかり者の桃花を会計に、何度か香港に来た事の有る安奈をリーダーにして三人の旅が始まる事になった。 粗方荷物もかたついた頃夕食までの間近くを散策しょうと言う事になった。 「四時半ロビー集合だからあまり遠くは無理ね」 安奈の提案でホテルから橋で繋がれた九龍公園に行く事にした。 この時期香港は雨季だ。 湿度が異様に高い。 テレビの天気予報では温度と伴に湿度も表示される。 日本の梅雨と違うのは、雨が一日中降るわけではなく、所謂スコールと言うやつで降ったり止んだりを繰り返すため傘を持たずに雨宿りをしながら歩く人も多かった。 公園の中は緑と花で美しかった。 もっと中国的なのかと思っていたがそうでも無く、大きな池には鯉や亀が飼われすぐそばに大きな鳥のケージがあった。 近くにアイスクリームスタンドが在るというので行ってみたが雨季のせいかシャッターが降りていた。 桃花がガイドブックを見た。 公園を出た地下鉄の入り口あたりに、ジューススタンドやコンビニがあると言う。 直ぐに話しが決まり行く事にした。 公園を抜けた頃、急に空が妖しくなったと思ったらいきなりの大雨だ。 『頭が洗える』 と桃花が言うほどの雨が三人を襲った。   あちこちで傘を持たない人たちが雨宿りをしていた。 どうにか地下鉄の入り口にたどり着き、雨が上がるまで待つ事にしたがそのあいだにも人はどんどん多くなっていく。 地下鉄から出ようとして雨で出られない人達と、地下鉄に乗るために階段を下りようとする人達で出入り口はごった返していた。 人波に押され、気が付くと階段がすぐ後ろに迫っている。 (このままでは、階段から落ちるかも知れない)
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