雨の出会い

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「いや、何も・・」 急で返事に困った。 「なにもだ? お前がニヤけるなんて・・ 女か? めずらしいな」 「女だ? 有る訳が無い。 こいつは俺が好きなんだ。」 チャンスが又訳の分からない事を言い出す。 ジュニをのぞき込む。 「なあ本当に女か? やっと俺を諦めたのか? ん? ん?」 ちゃかしている。 「どっちも違うよ」 笑って返した。 「からかうのは止めろよ。 本当に男が好きならお前じゃなく俺を選ぶさ、なあ」 ジフンが助け舟を出してくれる。 「お前達いいかげんにしろよ。 さっきやった祝いも返せ」 三人は顔を見合わせて笑った。 (そうだ。 この友人達のお陰でこの国でやって来られた) 改めてそう思った。 「まあまあそう怒るな。 この後のメシは俺がおごるから。 新しくセントラルにオープンした店はどうだ? 飲茶の店だが夜からは本格的な中華も出すつもりだから良いコックも雇い入れたんだ。 それとも焼肉にするか? 九龍の店ならもう開いてるぜ」 チャンスがそう言う。 「じゃあメシの後の酒は俺がもつか」 ジフンが続けた。 「仕方ない。 それなら許してやるか」 三人は顔を見合わせてまた笑った。                      ホテルのロビーに着くと何人かの客とガイドが待っていた。 まだ来ていない人がいるらしく五分ほど待たされてから迎えのバスに乗った。 この後二箇所ほどみやげ物屋などの店を廻り、食事をしてから最後にオープントップバスに乗る予定だ。 最初に連れて行かれたシルクの専門店で母と叔母にパジャマを買った。 安奈の話だとこうした店のマージンのお陰でツアー料金が安くなるらしい。 「いくら貧乏旅行でも少しは貢献しないとね」 安奈は両手に持てないくらい品物を抱え、桃花は店員に電卓を見せながら値段の交渉をしているようだ。 二人の買い物が終わるまで入り口近くの椅子にを腰掛けて待った。 見ると、新婚らしいカップルがお互いの肩に当てながらペアのパジャマを選んでいる。 「いいなぁ・・羨ましい。 私も潤一郎さんとペアのパジャマが着たいな」 いつの間に来たのか桃花が本当に羨ましそうに言った。
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