彼女の願いは

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そんなことはあるものの、僕らは本当に仲良く、隠し事もせず、互いを思いやる日々を送り、先日ついに彼女にプロポーズした。 「結婚するつもりなのに、まだ帽子無しの姿を見せてくれないの?」 彼女は、喜びをまっすぐに出せないもどかしさをごまかすように、少しおどけて言った。そして、 「次に会う時にお返事するね。きっと大切な日になると思うから、その日は絶対帽子取ってきてね。どんなにぺちゃんこでも好きだから大丈夫!」と笑った。 またそんなことを。帽子は僕という人間を表すのに不可欠なんだ。それについてわざわざ話したことはないけど、当然彼女だってわかっているはずだ。何より出会った頃から「似合ってる。」と言ってくれているんだし。 とにかく、取る取らないは大した問題ではない。素の姿など、結婚したら、どうせ毎日見ることになるのだ。
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