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瑠美はふんふんと聞きながら、足を組み直した。追尾ミサイルみたいに、おれの視線も追う。また、スケベといわれそうだ。
「でも……みたいだとか。ようだだから、まだはっきりとした証拠があるわけじゃないのよね」
瑠美のいうとおり。
もつ鍋屋での話をつまみ食いしたおれの推測だが、ヤツは限りなく『クロ』だ。アイドルのような仮面の下では、どす黒い濁流で溢れてる。ショウに飲まれた女たちは、いずれ溺れ死ぬだろう。その前に、ひとりでも救い上げなきゃならない。
それが、おれの仕事だ。
「もちろん、まだ推測だからそれはこれからだ。いずれヤツの化けの皮を剥がしてやるよ」
瑠美がわずかに眉尻を下げた。
「相手はヤクザかも知れないんでしょ。勢い込むのはいいけど、また危ない目に会って入院なんかしないでよ」
おっ!
心配してくれてるのか。
やっぱりおれに惚れてるんだな。
多分、デレッとした顔になったのだろう、すかさず瑠美から爆弾を落とされた。
「ちょっと勘違いしないでよ。あなたが入院したら、またわたしが手続きしなきゃいけないんだから、それが面倒なだけよ」
とかなんとかいっちゃって、結局おれのことが──。
だが、この甘い雰囲気をぶち壊すように、おれの携帯が鳴った。
画面を見たら、博多北警察署生活安全課の加治木刑事だ。何か分かったのだろう。
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