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『おい、幸太郎! どうしたんだよ?』
さっきから呼ばれていたようだけど、ようやくその声に気づいた。
「あ、ああ、すまない」
『大丈夫かおまえ……』
おれを気づかってくれるのは嬉しいが、もうひとつ確かめたいことが出来た。
「おっさん教えてくれ。そのイシモトってのはどんな野郎なんだ?」
『イシモト? ちょっと待ってな』
ガサガサと音がする。おそらく組員リストを見ているのだろう。もしくは端末から情報を引っ張り出しているのか。
『あった、あった。いいかいうぞ。名前は石本剛太、三十五才。前に傷害で三年ほど懲役を食らってるな。由良組の組員で、売り出し中の野郎みたいだ』
あの顔面凶器が三十五才とは。老けた野郎だ。逆に顔を武器にして貫禄で押してるのだろうか。ついでに名前の漢字を訊いた。
「それで石本は、どっちに着いてる?」
『どっちって、何だ?』
「由良組は跡目問題で、分裂騒ぎの真っ最中だろう。石本が若頭派なのか、跡目に名乗りをあげた若頭補佐派なのか、知りたいんだよ」
半分あきれたように加治木がいう。
『おまえなあ、警察の情報をなんだと思ってんだよ……』
ここが肝心だ。どうしても知らなきゃいけない。それによっては、おれの動きが変わる。確か、あんぱん女のはなしだと補佐についてるばずだが。
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