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もう一度頼みこむと、加治木はしぶしぶ教えてくれた。石本は、若頭補佐派だった。
その瞬間、おれに稲妻が走った。
いろんなことが頭によみがえる。
「この住所じゃ風俗店は出せないはずだ」
──ベンツのマスターはそういった。
高額な時計を見せながらスカウトするショウ。
──あの甘さならつけこめる。
もつ鍋屋で突然震えだした紗英。
──おれの勘が正しかったら……。
一瞬で、ショウと石本をはめる絵が出来上がったのだ。
念のために加治木に確かめた。
「なあ、おっさん。正直なところ、警察としては反逆する若頭補佐よりも、組をまとめてきた若頭に由良組を継いで欲しいんだろう。その方が組内で抗争も起きずに、しゃんしゃんと手を打てるからな」
ガタン、と音がした。どうやら驚いて受話器を落としたみたいだ。そりゃ焦るよな。おれみたいな素人に核心をつかれたんだから。しどろもどろの返事が来た。
『お、お、おまえなあ……』
これ以上加治木に喋らせると、彼の刑事としての立場が悪くなる。無理矢理話を止めさせた。情報提供のお礼として、加治木にご褒美を与えることにしよう。
「おっさん、石本に下手を打たせて、若頭補佐を跡目争いから引きずり下ろしてやるよ。そのついでに、おっさんにも手柄をやるから待ってな」
すると、焦ったのか加治木が高速でいった。
『おまえ一体、なにをやらかす気だ。頼むからチョロチョロ……』
ここで携帯をぶち切りした。
いつだって、ぶち切られるよりもぶち切る方が楽しいよな。特に相手が警察だとね。
おれは携帯を閉じて、決意を胸に燃やした。
ショウと石本をつぶしてやる!
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