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   ブルーのペンキをはけ塗りしたような、色むらのない夏空が広がっている。入道雲は押しやられたのか、彼方に小さく浮かんでいた。ケヤキ並木は気をつけの姿勢でまっすぐ伸びている。どうやら風は有給休暇のようだ。  おれは愛車の流星号、(といってもただのママチャリ)にまたがり、ダイチとナナミの通う学校に向かった。今の時間は九時十五分。約束の時間は十時だが早めに出た。  博多駅から天神へとつながる住吉通りは、経済活動に忙しい車でぎっしり。サラリーマンもOLさんも、買い物に向かうおばちゃんたちも、朝からわずかな日陰を縫うように歩いていた。今日もしっかり35度を越えそうだ。  おれは住吉通りを横切り住吉校区に進む。自転車を漕ぎながら最近テレビで見た、イジメ討論会を思い出していた。  学校関係者は、「生徒たちがみんな口をつむぐので、イジメの実態をつかむのが難しいんですよ」、と必死に弁明する。  それに対してコメンテーターのひとりが、「ならばランドセルに盗聴器を着けたらどうですか?」、なんてバカな回答で失笑を買っていた。  だが、一概にバカな意見だとは片付けられないのが、イジメ問題なのだ。  大人の社会に経済格差があるように、子どもたちの世界にも、力の格差は存在する。  
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