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   南住吉小学校と書かれた門柱が、頼りなくおれを迎えてくれた。となりにはブラスバンド部で有名な、精華女子高校がある。今年も全国大会優勝を目指しているのだろう、華やかな楽曲がここまで届く。だが、その明るさは門柱で弾かれて校舎には響かない。  おれは玄関入ってすぐの事務室に顔を覗かせた。年輩の女性が応対してくれたのだが、おれを見て息を飲む。そして目をわずかに広げた。  そりゃそうだろうね。今日のおれの服装は上下真っ白のスーツ。しかもダブル。シャツはペイズリー柄のオープンに、帽子はパールのパナマハット。それに薄いブラウンのサングラスをかけていた。  どこからどうみても、まともなヤツじゃない。あっち系の人間に見られたのだろう。でも、今日はこれじゃないとダメなんだよ。普通の格好じゃ、なめられるからね。  まずはハッタリをかまして、こっちのペースに引き込むのが目的だ。  来客用と印字された、茶色いビニール製のスリッパを与えられた。おれはペタン、ペタンとわざと音を立て事務員さんの後をついていく。緊張した事務員さんが、時々振り返り、こちらです、と手で誘導される。そして職員室を通りすぎ会議室に案内された。  
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