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   待ってる間に考えた。  ──今を生きてる子どもたちは、果たして幸せなんだろうか。  ひと世代上のおやじたちは、誇らしげにいう。 「おれらが子どもの頃は何もなかったが楽しかったよな。今の子どもたちは物がない不自由さを知らないから、かわいそうだ」  案外、いい当ててるかも知れない。  今は、欲しいものが簡単に手に入る便利な時代になった。もちろん余分な物もだけど。そのひとつがインターネットかも知れない。  学校でイジメにあい逃げ帰っても、スマホを開けばSNSで罵詈雑言を浴びせられる。便利な道具が一転、悪魔の武器へと変身するのだ。どこに居ようと、誰といようと容赦なく24時間襲ってくる。しかも悪意の牙をむきながら。  えじきになった子どもたちには、安らぐ場所などどこにもないのだ。    おれがため息をついた十時をすこし回ったころだ、扉がノックされた。  時間だ。メンバーがそろったのだろう。おれは体勢を変える。椅子をななめ横に向けて足を組み、両手を首の後ろで組んだ。いかにも待ちくたびれた雰囲気を出した。  そして、バリトンとバスの中間くらいの声で、入りなよ、と返した。  さあ、ゴングが鳴った。  戦闘開始だ。  
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