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   ここで軽く笑顔を見せてやる。 「そうかい。うちのダイチが一番仲良くさせてもらってるのが浩二くんらしい。ありがとな」  中川婦人が目を大きくした。自分の子どもがダイチをイジメているかも知れないと、教頭から聞いているはずだ。だから今日ここにいる。なのにダイチの叔父だというおれから感謝されたのだ。その戸惑いが言葉に出る。  おれから視線を外し、反対側の壁に向かっていった。 「そ、そうなのね。うちの浩二は人一倍優しいからそうなんでしょうね。そんな風にしつけていますから」  教頭がタヌキなら、こいつはキツネだな。気の強さからみてかなりプライドは高そうだ。確か、旦那は医者だったはず。  おれは真ん中の女性に顔を向けた。 「隣の方は?」  すると中川婦人がしゃしゃり出る。自分が仕切らないと我慢出来ない性分なんだろう。 「わたしが紹介しますわ。わたしの隣は山口さん。そのお隣が池永さんです。これでよろしいでしょうか」  中川の切口上におれは軽くうなずいた。  この二人が山口俊一と池永博史の母親たちだ。山口の旦那は公務員で、池永の旦那は中堅メーカーのサラリーマン。交渉の過程で必要になるかと思って調べていた。  山口婦人も中川同様に、敵意むき出しの目でおれを睨んで来る。よろしくともいわないし、頭も下げやしない。  厄介そうな二人だ。  片や、池永博史の母親はふっくらとした体型ゆえか、穏やかそうに見えた。唯一、おれに頭を下げてくれたのだ。  話のターゲットを彼女に決めた瞬間だった。  
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