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   おれは右側に首を振った。残りは学校関係者たちだ。 「そちらは?」  教頭が中川に負けじと自己主張を始める。ひと言いいたい。リーダーが前に出すぎると部下は育たないぜ。 「わたしから紹介しましょう。わたしの隣は学年主任の竹内先生です」  生えぎわ後退男だ。学年主任の重責を担っているのだろう。そのストレスで髪が抜けたのかも知れない。お気の毒なこと。 「その隣は、熊野先生です。指導教科は……」  おれもたまには自己主張とやらをしてみたくなった。教頭に割って入る。 「体育教師だろう」  いい当てられて、教頭はフリーズした。別に驚くことでもないだろう。その体格とジャージ姿なら誰でも分かるぜ。教頭は咳ばらいをして続けた。  ということは、残る女性は──。 「一番端に座っているのが吉原くんの担任で、村田先生です」  やっぱり担任か。  村田だけが立ちあがり、よろしくお願いします、と頭を下げた。但し、顔色は青く座っても下を向いたままだ。  自分の受け持つ生徒がイジメにあっている。そう聞かされた時点で、うろたえたことだろう。まだ教師としての経験は浅そうだから、低学年を任されているのかも知れないな。  日常の勤務で手いっぱいなのに、イジメ問題まで勃発した。   おそらく村田の頭の中は、パニック寸前のはずだ。落とすならこの女だな。  おれは素早く頭の中で、この後の進行表を書き上げた。  
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