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   “告訴”  この二文字に、全員が凍りついたようだ。  出席者たちはおれが暴力団だと思っているはず。なのに警察を出してもひるまないし、告訴までするという。計算が狂ったのだろう、中川は困り果てた顔で教頭にすがる。 「教頭先生……」  教頭も判断に困ってる。告訴され学校に警察が介入したとなると、自分の点数が下がる。おそらく頭の中では損得勘定のそろばんが、高速で弾かれていることだろう。  今度は教頭を攻める番だ。 「教頭先生よお。なんだったら教育委員会のお偉いさん方も呼んでくれよ。この学校のイジメの実態を、おれから直接報告するからさ」  教頭はあ然としておれを見つめる。この展開で、なぜ教育委員会が出てくるんだ? そういいたげな顔だ。  教頭にとって警察よりもっと呼ばれたくないのが、教育委員会だ。問題が有ろうと無かろうと痛くもない腹を探られて、自分の職歴に傷がつくかも知れない。  今度はマッハのスピードで、そろばんを弾いてるはずだ。  次は担任だ。 「村田先生に、学年主任さんよお」  二人の顔が緊張でゆがむ。今度は何をいわれるのだろうか、まるでお化けでも見るように、ぎこちなくおれに顔を向けた。熊野は目を閉じ腕組みしたままだ。とりあえず筋肉バカは無視しよう。竹内は口を固く結んでいるせいか、仕方なく村田が応える。そろ泣きだしそうな声だった。 「な、なんでしょうか?」  
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