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   おれは威圧を込めて、フンと鼻を鳴らした。 「そうやって気丈に振る舞ってるつもりでも、内心じゃぶるってんだろう。イジメを見てみぬ振りをしてたのは分かってんだよ。だから先生には、マスコミというプレゼントをやるよ。あいつら容赦ないからなぁ、洗いざらいほじくり出すぜ。そうなる前に話してみなよ。すっきりするぜぇ」  すると、今まで置き物のように動かなかった体育教師の熊野が、声を荒げた。 「愛田さん。さきほど警察や教育委員会、マスコミを呼ぶとかいわれましたが、中川くんたちが吉原くんをイジメた証拠はあるんですか? はっきりとした証拠は? すべては吉原くんがいってることでしょう」  まだ、そんなことをいってるようじゃこいつはダメだな。イジメのほとんどは闇に隠れているんだよ。証拠、証拠とわめくより、まず生徒に寄り添うのが先だろう。そうすれば事実は自ずと出てくるよ。じゃないと、隠れイジメは減らないぜ。  おれの強気な態度は変わらない。 「熊野先生よ。イジメの証拠なんて後から出てくるもんなんだよ。火のないところに煙はたたず、っていうだろう。だったら火をつければいいだけのこと。ネットに書きこめば、善意の書きこみという煙がいくらでもたつぜ」  熊野はまた反撃してきた。 「それは捏造という意味ですか?」  即答した。 「違う!」  おれの声に熊野がひるんだ。身体を前にかがませていった。 「イジメが正しいだなんて誰も思っちゃいねえ。でもな、やめさせたくても声に出来ない奴がほとんどなんだよ。いえば今度は自分がイジメられるからな。だからネットに書きこんで炎上させるしか方法はないんだよ。だが、その動機は立派な義憤だ」  
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