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   だが、熊野は鼻で笑う。 「義憤だなんて、何を偉そうなことを。そんなネットの情報なんか、誰も相手にしないでしょ。それにプロバイダーに申し込めば、簡単に削除出来るんじゃないんですか?」  だから筋肉バカは嫌いだ。  筋肉の前に頭を鍛えろよ。  いいかえそうとした、その時──  金切声がこだました。 「やめてください! ネットに書きこむのだけはやめてください。お願いします!」  それは今までひと言も発しなかった、池永博史の母親だった。その顔は興奮の赤色から、徐々に青ざめていく。自分の発言に驚いているのか、固く口を結びテーブルの一点を見つめていた。  なるほど。彼女だけはネットの恐ろしさを知ってるようだ。  知らない全員は、何をいってるんだと池永を見つめている。  みんなにいった。 「池永さんだけは、分かってるみたいだな」  筋肉バカが首をかしげる。 「何がですか?」  おれは大袈裟に、どうしようもないな、そんな顔を見せた。 「あのな、ネットに一度書きこまれた内容は、一生消えないんだよ。ネットの海を亡霊のようにいつまでもさまよい続け、ある日突然目の前に現れる。それも腐り果てた姿でな」  
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