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バカにするな、という抗議か、ぶ然とした顔でまた腕組みし、椅子の背もたれに背中をあずけた。
「もちろん知ってますよ。かわいそうな事件でしたね。確かに彼女は自殺したけど、最後には表彰されて良かったじゃないですか」
おれは笑いがこみ上げて来るのを我慢出来なかった。やっぱりバカだ。少しは脳に栄養をやれよ。
「おめでたい野郎だな、おめえは」
熊野はいきなり立ち上がり、おれに罵声を浴びせた。
「おれをバカにするのか。あんたが何者かは知らないが、いい加減にしろよ!」
その顔には怒りがまざまざと浮かんでいる。今にも飛びかかってきそうな勢いだった。プライドの高い奴が取る言動だ。
おれは背中を椅子にあずけて、軽く腕を組んだ。こんな時には挑発に乗ってはいけない。落ち着いて話すことだ。
「いい加減には出来ねえな、大事なポイントだ。確かに亡くなった『葛西りま』さんはかわいそうだ。家族も悲嘆にくれただろう。
だがな、彼女をイジメた生徒は十五人も居るんだよ。しかも、未だにネット攻撃を受けてる」
その数の多さには驚いたようだが、何をいいたいのか意味が分からない。そんな顔たちがおれに向いてる。知らなきゃ教えてやろう。ネットの本当の恐さを。
「その十五人はな、全員実名で、しかも顔写真付きで、『こいつらがイジメの犯人だ!』と、ネットに載ってんだよ。
しかもご丁寧に、担任や部活の先生も実名で載ってるよ。『学校ぐるみのいじめだった!』、ってな」
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