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まさか?!
今度は驚きで目を開き、口を広げた顔、顔、顔だ。
おれは前かがみになって、テーブルで両手を組んだ。これから話すことは今日の大事なポイントだ。分かってもらわなきゃいけない。
「嘘じゃねえぜ。何だったら試しに検索してみな。かなり詳しく書かれていたから、おそらく身近な人間が書いたんだろうな。それこそ義憤にかられたんだと思う。
おれが最初に見た元サイトはすでに消えてる。でもな、同調した人間なのか、面白半分の人間がやったのかは知らないが、コピーされて他のサイトに載せられてるんだよ」
またまた無言の行列がおれを見つめてくる。
「試しに、そのイジメっ子の十五人のうち誰でもいいから名前で検索してみな。イジメ事件のサイトに飛ぶから。
たとえ本人が忘れたくて記憶の奥底に埋めても、世間の話しに出なくなっても五年後、十年後に名前で検索してみなよ。亡霊のように浮き上がってくるんだよ。分かるか。一度ネットに書きこまれたら絶対に消えない。一生逃げられないんだよ」
おれはゆっくりと緊張の顔たちをね目回した。
それから少し間を空け、唸るようにいった。
「いいか。この先もイジメが続いて、もしもダイチが大怪我したり、最悪、死んだりしたら覚悟しなよ。おれも容赦なく実名入りでネットに書きこむからな。
そしてイジメの証拠を見つけて、これまでの経緯をすべて教育委員会に公表する。記者会見を開き、マスコミにも情報公開してやる。
その時は全員、きっちり責任とってもらうからな。首を洗って待ってろよ。心配で九州くんだりまで来たんだ。必ず尻尾をつかんでやる」
一同の顔色が変わった。口を結び震えている。便利なインターネットが恐怖の武器になる恐ろしさと、おれの本気度を知って──。
おれは保護者たちに向いた。
中川さんと呼ぶと、中川はハンカチで口を押え怯えた目を見せる。
「おたくの浩二くんは優秀らしいな。いずれは父親と同じ医学の道に進むんだろう」
何故、夫の職業を知っているのか、と驚いているようだ。そんなこと調べるのは簡単だ。それより大切なのはあんたの息子の未来だよ。
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