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部屋は水を打ったように静まりかえった。誰もが口びるを噛みうなだれている。気がつくと、隣の精華女子高校のブラスバンドの音が聞こえ始めた。
ようやく話を聞く体勢が出来たようだ。
おれはここでサングラスを外した。ここからは、一人一人と目で語り合わなければならないからだ。
これを読んでるあんたも、イジメについて考えて欲しい。良かったら子どもたちの未来について、幸せになれる道を、一緒に探して欲しい。
「保護者の皆さん、そして先生たちも聴いてくれ」
そして、おれの長い『語り』が始まった──
今の子どもたちは、学校でも家ででも震えてるんだよ。
それはおれたち大人が、光ばかりで影を見ようとしないからだ。
1980年代に、校内暴力の嵐が吹き荒れた。時代が高学歴だけが幸福への道だと説いたから、勉強の苦手な連中が惨めさを感じて暴れ始めた。
その校内暴力が深刻化すると、業界やマスコミは一斉に光をあてた。
そして、学校は体罰や警察の介入という、厳格な校則のもとに管理主義をとって、力で校内暴力を押さえつけた。
その結果、校内暴力は下火になったが、問題そのものが解決した訳ではない。
光には当然、影が存在する。
校内暴力に当てられた光は、その向こう側に濃い影を作った。
それがいじめだ。
今度はいじめに光が当たると、その影として不登校が生まれた。その不登校の影として結果、引きこもりが生まれてしまい、状況はますます下振れとなった。
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