265人が本棚に入れています
本棚に追加
──おれの長い『語り』は終わった。
中川たち保護者、それに担任の村田はハンカチで顔を押さえ、すすり泣いている。男性たちも深くうつむいていた。
最後の仕上げだ。
おれは敬語に切り替えた。
「中川さん、山口さん、池永さん。
今なら間に合います。間に合うんですよ。
あなたたちも、自分の子どもを犯罪者になんかしたくないでしょう。明るく豊かな未来を送って欲しいでしょう。ネット被害になんか会いたくないでしょ。今動かなかったら、小森さんのように必ず後悔しますよ。
お願いです。今すぐ、ダイチへのイジメをやめさせてください。」
真っ赤な目をして中川は何度もうなずく。山口も右に倣えで顔を縦に振る。
ただ池永だけは言葉にした。
「わかりました。みなさんと話し合って子どもたちに、イジメをやめさせます。体を張っていいきかせます。ですから、わたしたちを許してください」
池永が立ちあがり頭を下げた。慌てて中川と山口も立ちあがり、おれに深々と頭を下げる。流れる鼻水を押えながら。
「わかりました。ありがとうございます。どうぞ座ってください」
次に教師たちに顔を向けいった。
「教頭先生。あなたが主導されてこの部屋に入る前に、口裏合わせをしたことはわかっています。だからこそ、あなたが先頭に立っていじめを無くして欲しいんです」
教頭は黙ってうつむいている。無言の了解だ。
ダイチには障害があるし、イジメの証拠があるわけではない。それを利用して闇に葬ろうとしたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!